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本ツール作成の背景と、主観的ウェルビーイングと空間要素プロジェクト
プロジェクトについて
「主観的ウェルビーイングと空間要素プロジェクト」(仮)は、建築の発注者、設計者、施工者、そして実際に使う人など、建築に関わるすべての人が「心地よさ」を感じられることを目指しています。
現代社会では、多くの活動が建築物の中で行われています。そのため、心地よくつくられ、心地よく使われる空間を目指すことは、よりよい社会をつくることにつながると考えています。
建築設計や施工に関わる人々の「めやす」として
「心地よさ」を感じられる空間をつくるための明確な基準はまだ十分に整っているとは言えません。予算や敷地面積などの限られた条件のなかで、天井の高さや、部屋の広さなど、どの空間要素を優先すれば「心地よさ」につながるのかは、これまで設計者の経験や感覚に頼る部分が大きいのが現状です。
そこで、このプロジェクトでは、「主観的ウェルビーイング」と「空間要素」の関係を整理し、空間づくりのためのひとつの「めやす」となるツールをつくりました。あくまで参考値ではありますが、これを土台として、自由な発想や創造性を広げるためにご活用ください。
本ツールが、空間の「心地よさ」をつくる一助となり、よりよい社会につながることを願っています。
調査対象と方法
日常生活の中で室内の滞在時間の長い住宅とオフィスを対象に、主観的ウェルビーイングに影響する構成要素のアンケートを実施し(有効回答数1,040 名)、相関分析によって主観的ウェルビーイングに影響する空間の構成要素を整理しました。なお、掲載しているデータは相関に基づくものであり、因果関係を示すものではありません。設計や意思決定の際は、補助的な参考情報として使用してください。
本ツールの使い方
- 評価項目: 向上させたい心理的指標(幸福度、満足度、気分など)を選択します。
- 属性: 対象となる居住者の性別、年代、居住地方を絞り込むことができます。
- 住宅 / オフィス: 住宅とオフィスにおける各建築要素の相関係数が、高い順(プラスの相関)にランキング形式で表示されます。
- 相関係数(Correlation): めやすとして、0.2以上を弱い相関、0.4以上を中程度の相関として解釈できます。
本ツールで採用している心理尺度について
・人生満足度尺度(SWLS):Diener らが主観的幸福感を計る目的で開発したもので、比較的長いスパンにおける主観的幸福度を確認する尺度とされている。本調査では、以下5 項目について質問した。「ほとんどの面で、私の人生は私の理想に近い」「私の人生は、とてもすばらしい状態だ」「私は自分の人生に満足している」「私はこれまで、自分の人生に求める大切なものを得てきた」「もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう」
・ポジティブ感情(PA)/ ネガティブ感情(NA):David Watson & Lee Anna Clark らが開発した気分評価尺度(日本語版PANAS)。ポジティブ感情「活気のある」「誇らしい」「強気な」等8項目、ネガティブ感情「びくびくした」「うろたえた」「心配した」等8項目の計16項目について、過去1ヶ月の体験を質問した。
・幸せの4因子:前野らが提唱する国内の幸福研究の主要概念。本調査では短縮版(8項目)を採用。「私は有能である」「私は社会・組織の要請に応えている」「私は人の喜ぶ顔が見たい」「私を大切に思ってくれる人たちがいる」等の項目について質問した。
【引用文献】
- ・Diener, E., Emmons, R. A., Larsen, R. J., and Griffin, S.:The satisfaction with life scale, Journal of PersonalityAssessment, 49(1),pp.71-75, 1985.
- ・佐藤徳,安田朝子:日本語版PANASの作成,性格心理学研究,9 (2),pp.138-139,2001.
- ・前野隆司:幸せのメカニズム 実踐・幸福学入門,講談社現代新書,2013
【プロジェクトメンバー】
- 前野隆司 武蔵野大学 ウェルビーイング学部 教授
- 山形与志樹 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授
- 稲葉俊郎 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 特任教授
- 岡昇平 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 特任講師